ボードゲームに因んだ小説を書いてみました!
今回テーマは、ボードゲーマーなら誰もが知る『ドミニオン』!
遊んでいるうちに気がついたら辺りが暗くなっていたなんてこと、一度は経験されたことがあるのではないでしょうか?

タイトル:人を呪わば穴二つ

何よアンタ、さっきから呪いばっかり押しつけてきて……!
私には言ったわよね、このゲーム、魔女を扱うのは難しいから手を出さない方が良いって……!
私はどんどんと手元に溜まっていく呪いをかき混ぜていく。
まったく、何度カードを掘っても呪いしか出てこないじゃない。いやんなっちゃう。
この呪い騒ぎの元凶になった目の前の男はニヤニヤと嫌な笑みを浮かべながら、またあの言葉を発する。
「俺は5金を払って……魔女を購入。」
あーーーッ!!!ムカつくムカつくムカつくムカつく!!!
思わず唇を噛み締める、血の味がしても気にしない。
それよりもこの呪いが忌々しい。点になるどころかマイナス、まさにゴミ以下よ。
だいたい、他の奴らは能天気すぎるのよ!!
何が、『うへぇ、また魔女か〜』『魔女デッキ、つええ〜』よ、なんとかしなさいよ!情けないわね!!
いいわ、誰もやらないなら私がやってやろうじゃないの。
「市場をプレイして、『魔女』を購入。」
「おっ、ついに魔女デッキに参入か!?」
うるさいわね、太刀打ちしない小物たちがピーチクパーチク騒ぐんじゃないわよ。
昔の書物でこんな言葉があるわ、
――目には目を、歯には歯を
ってね!呪いには呪いよ!!今に見てなさい、貴方達を地獄に落としてやるんだから!!

「はい、このターンでゲーム終わり!」
……え、もう終わり?
「嘘!?もう終わり!?」
「うん、属州が売り切れたからね。」
「はあ!?まだ私は買えてないのに!?」
「そりゃああれだけ魔女使ってれば買う余裕はないだろうね。呪いを除去する術もなかったみたいだし?」
この事態を招いたあの男が、小馬鹿にしたように言う。
悔しいけど、図星だった。
相手に呪いを送ることに夢中で、何も考えていなかった。
「これが本当の魔女狩り、ってやつ?」
うるさいうるさいうるさいっ!!!
半ば投げるように机に散らばせたデッキにあるのは僅かな金貨と銀貨、そして魔女と呪いだけ。
ああ、なんて馬鹿なのかしら、私。
こんな馬鹿な男に踊らされて。
「確かに呪いを除去するのは大変だったね〜」
「二人から飛んでくるから厄介だったぜ」
「ま、これだけ妨害したんだから、当然属州の数は俺の勝ち……ってあれ?」
「残念、一番属州を買ったのは僕みたいだ。」
「お前、途中で銀を金に変えまくってたもんな〜まさに錬金術師!」
「呪いでデッキが圧迫されても、それ以上にこっちのデッキを活性化させればいいだけだからね〜おかげで高い属州をたくさん買えたよ。」
「嘘だろ!?俺が勝ったと思ったのに、」
「まさに、『策士策に溺れる』だね。やった〜僕の勝ちだ。」

「ちょっと待てよ!」
「ちょっと待ちなさいよ!」
勝ち逃げは許さないと、狩られた魔女と溺れた策士は錬金術師を逃さない。
「もう一ゲーム、やるわよ!今度は呪いなんかに負けないんだから!」
「次こそ最大効率でデッキ回してやるよ!」
「やれやれ、またやるのー?今日これだけで終わっちゃうよ。」
「まあいいんじゃない?それくらいやめられないのもわかるぜ。これ、悪魔のゲームだったりして。」
「ははっ、違いない。」
一度ハマると抜け出せない悪魔のゲーム、その名も、ドミニオン。
