ボードゲーム小説 No.001:シーソルト&ペーパー 「海中マッチングならお任せ」

ボードゲームに因んだ小説を書いてみました!今回のテーマは『シーソルト&ペーパー』。

読み合いをしながらカードを集めて、ラストチャンスで一人勝ちも夢じゃない!
そんなアツいボドゲをイメージした小説をよければ読んでいってください。

目次

タイトル:海中マッチングならお任せ

俺はマッチングを生業としている。

マッチングと言っても、カニ同士、魚同士、サメと相性がいい人間、海の生き物たちを中心として引き合わせる簡単な仕事だ。

今流行っているマッチングアプリに次ぐ一大市場まで育つはずだと、目をつけている。

ペアができるまで引いてお気に入りなら手元に置き、お気に入りでなければ他の担当者へ回す。

それはマッチングアプリのように、指をスライドするだけで様々な生き物たちが現れていく。

カニと魚は同族同士でマッチングさせるのが圧倒的に成婚率が高い。

成婚するとまた新しい客を引き寄せることができる、いい商売だ。

ただし、これだけ注目されている界隈だ、勿論マッチングを試みるのは俺だけではない。

同業者たちも同様に、スライドして様々な生き物たちをヘッドハンティングしていく。

俺が呼び込もうと思っていたあの魚やあの人間、それだけではない、自分が有利になるボートや碇など、どれだけ横取りされてきたことか。

まあ自分も同じことをしているのだから、因果応報というやつだが。

同業者たちを差し置いて、俺は成り上がりたい。成り上がって、海の王になってやる。将来は人魚を囲むんだ。

鼻の下が伸びないように、そして同業者に勘繰られないように、成婚させるペアを作っていく。

皆、幸せそうな顔をしている。当然だ、あれだけ種族に拘って出身地が同じ生き物たちを集めたのだから。お揃いの色が似合っているぞ。

サメと人間で成婚させると、なんと同業者から横取りもできる。ノーリスクでヘッドハンティングができる、こんな美味しい話はないな。

成婚したサメと人間がその後どうなったかって?知るかそんなもん。食われてないといいよな。

よし、出身地も種族も十分に育ってきた。

これで勝ち点はだいぶ稼げたはずだ。俺は勝ち誇ったように口角を上げながら宣言をする。

引用:BoardGameGeek

「『ラストチャンス』だ、お前等。せいぜいましな成婚を目指すんだな。」


ラストチャンスが成功すれば、一気に同業者に差をつけることができる。

これで勝ち取ったポイントで、俺は独立する。この事業を独占経営するんだ。

口内に溜まってきた涎を周囲に勘付かれないように飲み込んだ。

同業者の用意も整ったらしい。

一斉にマッチング結果がオープンされた。

「10だ。俺の勝ちだな。」

聞くまでもない、俺は机に手をついて立ち上がろうとする。

隣の同業者は碇と蛸を集めてマッチングの準備をしていたようだが、一足遅かったな。揃う前に俺がラストチャンスを宣言した。

ラストチャンスの宣言は、実際のところは『死刑宣言』に等しい。

俺に勝利を掠め取られるのをただ待つだけ、所詮はお前らも『マッチングされる側』だったってことだ。

嗚呼、気分がいい。


頭を抱えたって無駄だ。俺の勝ちは決まっている。

「悪いな」

正面にいた男が笑っていた。薄気味悪い笑い方だ、どこか悪寒がする。

負け惜しみを言っているだけだ、俺の勝ちは決まって、

いや、この男、笑っている……?

男は、手元に抱えていた己の手札を見せてきた。

引用:BoardGameGeek

「俺は人魚、4枚だ。」

「に、人魚4枚……だと……!?」

馬鹿な、人魚はその美貌から希少価値が高く一人手元に置ければ幸運なはずなのに、それを此奴は4枚も……!?

「運が良くてね、美人さんが来てくれたよ。」

正面の男は人魚にキスをしながら俺が獲得する予定だったポイントを奪っていく。

「この美人さんたちを看板に、俺はこのマッチング事業を始めようかな。ご苦労さん。」

肩をポン、と叩かれる。嘲笑にも近い鼻息が耳の横を掠めていく。

くそっ……くそっ、くそくそっ、くそっ!!!!!!


慟哭が、響いた。

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